- 2008年3月 7日 11:39
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小林会長の時節一言「子守り歌の魅力(その1)」
http://www2.plala.or.jp/n-bunkyo/jisetsukako.htm#022

「時節一言」 第9回目掲載 子守り歌の魅力(その1) 会長 小林正明
一 ねんねんころりよ おころりよ 坊やは良い子だ ねんねしな
二 坊やのお守りは どこへ行った あの山越えて 里へ行った
三 里の土産に なにもろた でんでん太鼓に 笙の笛
四 起き上がり子法師に 振る太鼓(犬振り子) たたいてやるから ねんねしな
これは、一番広く日本全国に今から約三百年前に伝承され、歌われている<江戸子守唄>の歌詞です。"笙の笛"は、当時お伊勢参りが流行、その門前の土産店にあったそうです。私も手にしたことがありますが、雅楽に使う笙とはまるで違い竹で作った簡単に音が出せる竹笛でした。旅人が、「残してきた子どもに何か一つでもお土産を買って帰りたい」という親心が伝わってきます。
"振る太鼓(犬張り子)"の起源は、平安の貴族に始まった雛人形の男雛と女雛に控えていた犬です。江戸の武士や商人は、実際は写実的な犬を愛らしい"犬張り子に変えていきました。実は、この犬張り子の子どもの出産に関係していることを知りました。お産の軽い犬にあやかっていたそうです。出産前は犬張り子を「ざる」に乗せた物を妊婦に贈ります。ざるは竹製です。犬の文字の上に、竹という文字を書き込みます。すると『笑」という文字に似た形になるところから『笑っていられるほど楽にお産ができると縁起をかつぎます。今度は、振り子を乗せます。鼓をならした時、裏表とも同じ音がすることから『人生浮き沈みなく安泰に送れる」ことを意味しました。また、鼓の色を黄色くすることで、稲穂を連想させ『食べるに困らない』ことへと繋げました。
鼓はうこんで真黄色に染めた麻縄で縛ります。漢方薬のうこんを用いて『厄除け、無病」を祈ったのです。
この子守歌の短い歌詞の中に、縁起かつぎの大好きな江戸庶民の志向にと結びつき、世相が映し出されていると思います。産まれてきた子どもが幸せに育つようにという親だけではなく、周囲の人々の温かい心と願いが込められていたことがよく分かり深く感動しました。
ところで私もものごころついた頃から、寝床で必ずと言う位に歌ってくれた母の<江戸子守唄>を思い出します。静かな歌声に合わせて、母の手が小さく優しく肩やお尻をたたきます。するとまもなく安心して深い眠りに入りました。衣食が厳しい田舎での疎開生活の中でも、母は弟妹にも、同じように歌い続けました。川の字になって親子が布団に入ると、母は、片手に乳飲み子を抱えながら歌っていますので、子ども四人のお尻にはなかなかまわりきれません。次第に小さくなっていく歌声に耳を傾けます。しばらくするとポンと母の手が私に届きました。こうしてみんな笑顔で寝入りました。ときどき早目にに帰宅した亡父が母の補助役を、懸命に努めようとしたそうですが、子どもたちが待っていたのは、やはり母の子守歌でありました。
今年で九十歳となり、認知症が進んでいるかと心配していた母が、先日<江戸子守唄>を四番までひょうひょうと歌い続けることができたのには驚きました。この子守歌には、言葉ではいえない不思議な力があるにちがいないとつくづく思いました。
私が結婚して、一男一女の子どもが授かったのは四十年前のことです。実は妻も"ねんねこ"の中で祖母の歌う子守歌を聞いて育ったことを知りました。私と妻は子どもに江戸子守歌を聞かせながら寝かせてきました。やはり主として妻でありましたが、私は出来るだけ添い寝をするよう努めました。娘は妻の時も私の時も歌うたびに大粒の涙を流しながら寝付きました。
現在、保母をしている独身の娘は、子どもたちのお昼ねの時間には必ずこの子守歌を聞かせているようです。子どもたちは涙をいっぱいにして聞き入りながら眠りにつくそうです。
政府の教育再生会議では、親の自覚を求める子育て提案の筆頭に次のように書かれました、"保護者は子守歌を歌い、おっぱいをあげ、赤ちゃんの瞳をのぞく。母乳が十分出なくても抱きしめるだけでいい"と。
私は、とても寂しく悲しい気持ちになりました。無神経と言える提案もさることながら、日本古来の文化をいつから、なぜにこのように風化したのでありましょうか。人としての人類愛や家族愛が条例や規則などで決めることではありません。そうあってはならないと思います。
私と江戸子守歌との出会い、最近になり、また新しいドラマが待ち受けていました。(続)
参考文献 川原井 泰江著「守り子と女たちのこもりうた」(㈱ ショパン発行)(2007/06/21)
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