- 2008年7月 8日 00:13
- 紹介記事 ・ 原稿
「伝承されるわらべ唄・子守唄」 2005年 教育新聞社 『円卓』より
近年になり、童謡唱歌そして、〈わらべうた〉や〈こもりうた〉を取り上げたCDや本が目にとまります。殺伐としたニュースの絶えない社会に生きる私たちの心に、癒しと安らぎをもたらしてくれる...何か...があるのでしょう。これからお話しすることは、...何か...の一つに挙げられるのでは、と考えます。童謡唱歌は作曲者と作詞者が存在し、楽譜どうりに演奏しなければなりません。
また、『シューベルトの子守歌』や『ゆりかごの歌』に代表される創作子守歌も同様です。しかし前記のことは、日本の伝統文化である〈わらべうた〉や伝承子守唄については、あてはまりません。口承伝承されてきた『かごめかごめ』『通りゃんせ』等のわらべうたや、『五木の子守唄』『江戸子守唄』等の子守唄は、確かに楽譜が教科書にも掲載されています。楽譜は存在しますが、同一曲名であっても、それぞれ口承伝承されてきた唄の中の一つです。
伝承童謡(わらべうた)の採取をライフワークとしていた北原白秋が、「子守唄の大関である」と称した熊本県五木地方の『五木の子守唄』を例に挙げてみますと、『五木の子守唄』といえば、哀愁をおびたメロディと「おどまぼんぎりぼんぎり...」から始まる歌詞が浮かんでくることでしょう。出版されている多くの楽譜はこの歌詞が一番目で、「花はなんの花...」という四番の歌詞で終了しています。またメロディは編曲により、多少の変化はありますが、ほぼ同じです。実は採取された歌詞は、現存するだけで七十以上あります。メロディは伝承者により、違いがみられます。なぜ、このような現象が起きたかといいますと、現在でも愛唱されている『五木の子守唄』は、採譜された中の一曲です。その曲がラジオで流れ、後に音丸という芸者の歌唱によりレコード化され、日本全国に広まったことによります。
古来より口伝えにより伝わってきた〈わらべうた〉や伝承子守唄は、時代により、地域により、そして個々人の立場と心境によっても歌詞やメロディが変化し、今日まで歌われてきました。すなわち、日本の伝統文化である〈わらべうた〉や伝承子守唄は、「百人百歌」なのです。
声楽家・子守歌研究家 川原井泰江
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