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掲載原稿 002 「子守唄で抱きしめよう」 

 「子守唄で抱きしめよう 」     2004年 教育新聞社 『円卓』より
 
 
 毎日のように"虐待"や"子殺し"が報道されています。日本の歴史を紐解きますと、この様なことは古来より行われていました。江戸時代を例に挙げますと、繰り返し起こる天変地異により食糧難が続き、人々は子どもを授かっても育てられずに母親は胎児を流したり、暗黙の了解の下「間引き」という形で"子殺し"が行われていたのです。幸運にも生を受けた子どもとて状況により「餓死させるよりはまし」という親の考えのもと、三、四歳になると奉公に出されていました。
 親元で育てられている時ですら、生活は貧しく食べるものもろくに無い毎日だったはずです。奉公に出された子どもたちは、自分に対する親の気持ちを知っていましたので、奉公先で辛い目にあっても親元へ逃げ帰るようなことはしませんでした。このように、当時の子殺しや養育拒否は大人のエゴイズムにより引き起こされたものではなく、貧困などのいたしかたない社会情勢がもたらせたものだったのです。
 飽食の時代といわれ、なおかつ少子化が進む現在において、ストレスの発散を子どもへの暴力や虐待により解消している親がなんと多いことでしょう。「三つ子の魂 百まで」というように、幼児期に体験したことはその子の一生を左右します。親は子どもを愛情たっぷり込めた子守唄を歌いながら寝かせ、子どもは優しい響きの子守唄と肌の温もりの中で眠りに落ちていくという毎日の些細なことが、親子の信頼関係を揺ぎ無いものとしていくと私は考えています。
 幸せなことに『江戸子守唄』『五木の子守唄』を始めとして、日本には多くの子守唄が伝承されています。勿論『シューベルトの子守歌』や『中国地方の子守歌』『ゆりかごの歌』のような創作子守歌、そして自分独自の子守唄も大歓迎です。上手に歌えなくてもいいのです。肉声でワンフレーズでもいいですから、歌っていただきたい。そして子守唄と共に、抱きしめてあげてください。次世代をになう若い芽を温かく穏やかなものに育てることができるはずです。
 
 最後に、子守唄は心のオアシスであると同時に、やがて大きく成長していく子どもたちの「心の原点」になることを切に願っています。子守唄......それは民俗の源であり、母の子宮で温められた新しい魂そのものであると私は確信しています。どうぞ、愛する子を子守唄で抱きしめてあげてください。

                                      子守歌研究家・声楽家 川原井泰江

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